AGの挑戦

昭和女子のエッセイ

秋の味覚好きな 友人の話

私には、お芋と栗が好きな友人がいる。

少し天然で、憎めないおちょこちょいだ。

 

彼女の家に遊びにいったとき、

出されたお茶を飲まずにしばらく話に夢中でいた。

彼女はトイレか何かでいったん席を外し、用を済ませて帰ってきて

私のお茶を一口飲んだ後

「お茶飲んでな~」

と勧められた。

ホラーである。

たった今飲んだ事を覚えていない。無意識の行動だ。

 

また、若かりし頃は買い物に行くとイケメンを見つける

男前レーダーを試していた。

カフェで見つけた2人の男性。

「眼鏡の人かっこいい♡」「だよね~」とずっと話していたが

二人とも眼鏡をかけていて、それぞれ別の男性をかっこいいと思っていたのに

ちゃんと見ていなさ過ぎて、同じ人の事だと勘違いし会話をしていた。

かみ合わないわけである。これは私も悪かった。

「どっちも眼鏡やった…」

店を後にするときにつぶやいた言葉が忘れられない。

 

他にもえっなんで?なエピソードなどもいくつもある彼女は

冒頭にも書いたようにお芋と栗が好きで

モンブランや甘栗、スイートポテトなどがあるとテンションが上がる。

かわいいやつ。

 

そんな彼女が、急にあんにゅいな表情で話し始めた日があった。

「私が死んだら…」

「えっ?」

ちょっとドキッとした。何か悩み事でもあるのか?

「棺桶に栗と芋を入れて欲しい」

「…」(どうゆうこと?)

「埋め尽くしてほしいくらい」

 

いやちょっと待って。

想像してみて。

悲しみに暮れ、最後の顔を見る時に、

花の代わりにさつま芋と栗を渡される遺族や親しき人たちを。

芋と栗を周りにいれ、顔を見て「いままでありがとう…」とつぶやく。

顔や体の周りに埋め尽くされた芋と栗。

結構重たい。

そして焼くとき。

めっちゃいい匂いがする。

栗ははじくかもしれん。

骨を拾う時、焼き芋と天津甘栗だらけ。

ラケル

なんとも言えないシュールだ。

ちょっと出てみたい。彼女より長生きしなければ。

いや、焼き芋と甘栗食べられなくなる。

トラウマになるわ!

 

呼吸もつらく涙がこぼれるほど笑いあった。

真剣に聞いて損した。なんなん急に。

それくらい好きってことを伝えたかったのか!

私のカルピスと一緒やん。もう。

 

一人になって冷静に考えてみたら、

あまりの高温の為、芋も栗もすべて炭になるだろう。

そんなの嫌だ。

彼女には長生きをしてもらうしかないな。

 

秋の味覚が並ぶと必ず思い出すエピソードだ。