AGの挑戦

昭和女子のエッセイ

かりんとうの注意点

かりんとうも魅惑の食べ物の一つ。

 

以前に、かりんとうを家に買っておいたが出かける際、

どうしても食べたくなった。

でも数本食べたいだけで、1袋もいらない。

そんな時はと、ティッシュ2枚ほどを広げ

袋を斜めにしたときに偶然出たかりんとう5~6本を入れ簡単に包んだ。

本当に簡単に。

 

その日は少し肌寒かった為、踊る大走査線の織田裕二さんが来ていた

ような、薄手のカーキのジャンパーを着て、そっと包んだかりんとう

ポケットに入れ、意気揚々と出かけた。

しばらく車を走らせ、ここぞとばかりに、

ポケットから取り出したティッシュの包みを開け

運転中にも関わらずかりんとうを口に運ぶ。

最高のひと時だ。

 

目的地にも近づき、魅惑のかりんとうも口にでき、そして鼻歌も歌う。

これほどの時短があるだろうか。

ご機嫌である。

 

目的地に着き用事を済ませ、街を歩いていた時にふと自分の姿が映った。

身だしなみを軽く整えていると、

「ん?」となった。

ポケットにシミができている...気付かなかった...

軽く洗っても落ちない。しかもカーキだから濡れると濃くなる。

なので、あきらめて足早に帰宅した。

 

みなさんはかりんとうが油で揚げられていることを知っていただろうか?

私は知らなかったのである。魅惑の食べ物の制作工程を。

食器洗剤で洗っても落ちない。

もうクリーニングに出すしかない。

 

あきらめて数日後クリーニング店を訪ねた。

みなさんご存じだと思うが、クリーニング屋さんはカウンターごしに

お店の方がいて、1点1点調べ、質疑応答を繰り替えすスタイル。

お店の方は私より5歳ほど年上に見えるベテランのような女性の方だった。

今日のメインである染み抜について話しかけた。

「あのう、染み抜きもお願いできますか?」

いくつか質問され、しかたなく正直に答えた。

かりんとうのシミです」

 

不思議な時間が流れる。

辱めを受けているなど気づかせないよう平然を装った。

お店の方は、

「えっ?なんでポケットにかりんとう?そのまま入れた?どうゆうこと?」

の顔である。ベテランっぽいのに初めての経験のようだ。

 

「どうしても食べたくて、ティッシュかりんとうを包み、ポケットに

入れて、比較的にすぐ食べたのですが、シミになっていて...」

私としたことが。状況や気持ちまでめっちゃ細かく伝えてしまった。

 

数日後、プロの技を目の当たりにした。

キレイに消えていたのだ。素晴らしい。

 

私は服を新調する時、カーキを見た時、かりんとうを見た時、生地に触れた時に

毎回思い出す。

かりんとうも、きちんと座ってお茶と一緒に食すものだと。

決してポケットに忍ばせてはいけないと。